こねこのぴっち

『こねこのぴっち』

作 ハンス・フィッシャー
訳 石井桃子
出版社 岩波書店
発行日 1987年11月25日
価格 ¥1,500+税


りぜっとおばあさんの家で、5匹の子猫が産まれました。(そう、これこそが『たんじょうび』の最後にあった嬉しいできごとです!)なかでも1番小さくて、1番大人しい子猫がぴっちです。ぴっちは他の子猫たちのように、おばあさんの編み物をおもちゃにして遊ぶより違うことがしたいと思っていました。ひよこたちと遊びたいとか、やぎになってみたいとか、あひるのように泳いでみたいとか。それを次々と実践していくぴっち。ところがそのうち、うっかりうさぎ小屋に閉じこもってしまって・・・?

* * * * * * *
 
岩波の子どもの本シリーズ(小型版)として発売されたのが1954年。それから長く愛されてきた『こねこのぴっち』がその後大型絵本となって発売されたのが本書です。扉だけ見てもうっとりしてしまうほど、この細やかな仕事っぷりには惚れ惚れさせられます。


さてお話のなかで、ぴっちは動物たちの真似をしてさまざまな体験をします。ちょっぴりうまくいくこともありますが、たいてい思い通りにはいきません。そのうえ“おもいびょうき”になってしまうのですから。やがてぴっちは思います。「ねこより ほかのものに なるのはやめよう」、「ここが、いちばん いいところだ。」と。誰しもまわりを羨ましく思うことはあるけれど、まわりの人たちの優しさやあたたかさに触れると「自分は自分」と思えたり、今いるこの場所を大切に思えたりします。ぴっちを見ていると、そんなことに気付かされるようです。