なみ

『なみ』

作 スージー・リー
出版社 講談社
発行月 2009年7月
価格 ¥1,400+税


日傘をさしたお母さんと女の子が、海辺にやってきました。本書では、のど (本を開いたとき、真ん中にできる線) を境に、左ページには女の子、右ページには波が描かれています。波はのどを境に、女の子の方へはやってきません。それを良いことに、女の子は波に近付いたり、まるで波をからかうような素振りをします。けれど途中から、女の子は恐る恐るその境をまたいで、そっと波の方へ・・・
しぶきをあげて楽しんだり、波から逃げてあっかんべーをしてみたり、女の子と波は、まるで友だち同士みたいです。いっしょになって楽しむ5羽のカモメたちも、なんだか愛らしい。
ところが最後には大きな波が覆いかぶさるように迫ってきます。その迫力といったら!かもめもびっくりです。びしょ濡れになってしまった女の子でしたが、波が引いた砂浜をよーく見ると、嬉しい贈りものがありました。
最後はお母さんが迎えにきて、女の子は海に手を振って帰ります。

本書は文字のない絵本です。使われている色も、青と黒の2色だけ。それなのに、波のざわめきや、女の子の笑い声、カモメの羽ばたく音、それから潮のにおいや、ひんやりとした海の冷たさまでもが感じられるよう。
言葉はなくともしっかりと物語があって、とても心地の良い絵本です。

※2008年、ニューヨーク・タイムズ紙のBest Illustrated Children's booksに選ばれました。