はじめてのおつかい

『はじめてのおつかい』

作 筒井頼子
絵 林明子
出版社 福音館書店
発行日 1977年4月1日
※月刊「こどものとも」1976年3月1日発行
価格 ¥800+税


お母さんに頼まれて、牛乳を買いにおつかいに行くことになったみいちゃん。
ひとりで坂のてっぺんにあるお店に着きましたが、お店には誰もいません。
大きな深呼吸をして「ぎゅうにゅう ください」と言っても、もっと深く深呼吸をして「ぎゅうにゅう くださあい」と言っても、やっぱり誰も出てきません。

そこへ、たばこを買いにやって来たおじさん。その声で、やっとお店のおばさんが出てきたかと思うと、今度は太ったおばさんがやってきて、お店のおばさんと長話をするものだから、みいちゃんはなかなか言い出せません。
それでも、なんとか牛乳を買って、ぱっと駆け出したみいちゃんでしたが・・・。

* * * * * * *

みいちゃんにとっては、生まれてはじめてのおつかい。
その緊張感は、絵本から手に取るように伝わってきて、こちらまで胸がどきどきします。

みなさんは、自分の「はじめてのおつかい」を、覚えていますか?
お母さんやお父さんは、お子さんの「はじめてのおつかい」を、覚えていますか?

残念ながら、私自身のことを言うと、これっぽっちも覚えていません(笑)。
けれど母に聞くと、私の「はじめてのおつかい」は、ちょうどみいちゃんと同じ5歳くらいのときで、牛乳ではなく“クリームパン”だったそう。それはいったい誰が食べたんだろう?

みいちゃんが買って帰った牛乳がどうなったのかは、裏表紙に描かれています。
でも、はじめのページでお母さんは何かを作っていて、それはずばりホットケーキで、そっちに使うためだったのでは?と言う人もいます。
お母さんは「あかちゃんの ぎゅうにゅうが ほしいんだけど、(以下省略)」と言っていますが、赤ちゃんは牛乳を飲まないし・・・と言う人もいます。さて、本当のところはどうなんでしょう。

ちなみに、この絵本に出てくる、たばこを買いに来たおじさんや太ったおばさん、そしてこのみいちゃんまでもが、実は他の絵本に登場しているとか、いないとか・・・。

林明子さんの、そういう遊び心というか、隠し絵というか、そういうところを見つけた時の嬉しさは格別です。(本当に、たくさんあるんですよ~。)

ただし、もし見つけても、子どもたちには内緒にしましょう。(すごくすごく、言いたくなってしまいますが、ここはぐっと我慢して・・・)

自分で見つけるからこそ、嬉しいもの。
もしかすると、もしかして、いつか自分で見つける日がひょっこりやってくるかもしれないから、そのときまで、その喜びは取っておいてあげたいものです。