そらいろのたね

『そらいろのたね』

文 中川李枝子
絵 大村百合子
出版社 福音館書店
発行年月日 1979年5月31日
※月刊「こどものとも」1964年4月1日発行
価格 ¥800+税


模型のひこうきで遊んでいたゆうじは、
野原できつねと会いました。

「ぼくの たからものと、とりかえて」
きつねにそう言われ、ゆうじは、
ひこうきと“そらいろのたね”を、とりかえっこしました。

するとどうでしょう。
たねを植えた翌日には、
土の中から、小さなそらいろのいえが出てきました。

どんどん大きくなっていく、そらいろのいえ。
あとから、あとから、動物たちも集まってきました。

ところがそこへ、きつねがきて・・・。

* * * * * * *

絵をよく見てみると、あれれ?
この2匹のねずみって・・・この、おおかみって・・・と、なんだか見覚えのある顔ぶれがちらほら。

そんな遊び心もたのしいこの絵本は、『いやいやえん』(1962年)や『ぐりとぐら』(1963年)につぐ、中川李枝子さんと山脇百合子さんの、初期の作品です。

たねを植えて、おうちができて、ゾウやライオンまでいっしょに住めるほどおおきくなってしまうなんて、大人からすれば、突拍子もないおはなしです。でも、それってすてきですよね。みんなでいっしょに住めるくらいのおうちができてしまうなんて。みずいろでもなく、あおいろでもなく、“そらいろの”というのも、なんだか夢があってわくわくします。

その反面、最後の結末は、意外にもさっぱり。でも、それがいい。『もりのなか』(福音館書店刊)や『かいじゅうたちのいるところ』(冨山房刊)もそうだけれど、いいお話は、ちゃんとこっちの世界に帰ってくる。この絵本が、長いあいだ愛され続けているのは、ファンタジーの楽しさだけではなくて、安心できる結末があるからなのかもしれないと、私は思います。