みどりのゆび

岩波少年文庫101
『みどりのゆび』

作 モーリス・ドリュオン
絵 ジャクリーヌ・デュエーム
訳 安東次男
出版社 岩波書店
価格 640+税
※原書『TISTOU LES POUCES VERTS』(フランス)


お金持ちのお家に生まれた、少年チト。

仕事熱心なお父さんと、花束のように美しいお母さん、
お家はピカピカしたものがいっぱいで、
チトは“ほんとにしあわせなこども”でした。

(ただひとつ、
お父さんは兵器を作る工場を営んでいて、
それは町の、自慢の財産でもありました。)

ところが学校へ行くようになって、
チトが《ほかのこどもとおなじではない》ことを、
お父さんとお母さんは知りました。

それならばと、
チトのお父さんは、あたらしい方法の教育を提案します。

手はじめは、庭の授業でした。
ところが、その授業を受けているとき、
庭師のムスターシュじいさんは気付きました。

チトが、《みどりのおやゆび》を持っていると  

* * * * * * *

みどりのおやゆびは、目に見えるものではありません。でもそれは、種がどんなところにあろうとも、種を見つけて、たちどころに花を咲かせるという、チトのかくされた才能でした。
戦争がいっそう激しくなるなか、チトは考えました。自分にできることは、なにかないかと・・・。

作者のモーリス・ドリュオンさんは、フランスの作家さんです。第2次世界大戦に出征し、いくつものすぐれた小説を残しました。彼は、ムスターシュじいさんやチトのように、植物が好きだったそうです。



大切なことばが、本のあちこちに、たからもののように散らばっています。いくつになっても、胸の中にしまっておきたくなるような、そんなことばたち。清らかで、心に残るおはなしです。

ジャクリーヌ・デュエームさんの絵も、本当にきれいです。
この文庫版の他に、箱入り、布張りの愛蔵版もあります。そちらは挿し絵がカラーになっている部分もあって、よりいっそう美しい佇まいです。