きりぎりすくん

『きりぎりすくん』

作 アーノルド・ローベル
訳 三木卓
出版社 文化出版局
発行年月日 1979年10月14日
※原書『Grasshopper on the Road』(アメリカ)
価格 ¥854+税


“きりぎりすくんは みちを みつけたんです。
それは ながい ほこりっぽい みちでした。
おかを おぼり
たにへ くだる みちでした。
「よさそうな みちだなあ。」
と、きりぎりすくんは いいました。
「ぼく この みちを いくよ!」”(冒頭より一部抜粋)

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これは、きりぎりすくんの旅のおはなしです。
本書には、「おはようぐみ」、「あたらしいうち」、「そうじずき」、「ふなたび」、「いつでも」、「ゆうがた」の、6つのおはなしが収録されています。

でも、わたしが1番好きなのは、最初にも引用させていただいた、「おはようぐみ」のおはなしが始まる前の、冒頭のところ。きりぎりすくんは、まるでわたしたちの手をひくように、おはなしの旅へといざなってくれます。胸が、ゆっくりと高鳴るのを感じます。

さて、きりぎりすくんは、旅先でいろいろな虫たちと出会います。そして、彼らの思いに、じっくりと耳を傾けます。一見すると必要ないと思うようなことでも、寄り添うやさしさを持ち合わせています。

でも、それと同じくらい、自分には何が大切かも、よく分かっています。だから、できないことはできないと、ていねいに伝えます。自分は、自分の道を、進んでいかなかればならないから  

それでも、彼の旅は、とてもたのしそう。ひとつひとつの出会いが、きっと彼を、進ませているのだとも思います。

アーノルド・ローベルさんの本は、本当にいいなあと思います。繊細な線と、落ち着いた色使いの絵も、とてもきれいです。

※カタカナにはルビがふってあります。(漢字表記はありません)