たくさんのお月さま

『たくさんのお月さま』

文 ジェームズ・サーバー
絵 ルイス・スロボドキン
訳 中川千尋
出版社 徳間書店
発行年月日 1994年5月31日
※原題『Many moons』
価格 ¥1,600+税



むかし、海辺の王国に、レノアひめという、小さなおひめさまが住んでいました。ところがある日のこと、木いちごのタルトをたくさん食べすぎて、病気になってしまいました。

「なにか、ほしいものはあるかい?」そう尋ねた王さまに、レノアひめは言いました。「お月さまがほしいな。お月さまをもらったら、きっとげんきになるとおもうの」と。

そこで王さまは、すぐに家来を呼びました。けれど、大臣も、魔法使いも、数学の大先生も、月を取ってくるのは無理だと言って・・・。

* * * * * * *

まずさいしょに、“木いちごのタルト”を食べすぎて、病気になってしまったというおひめさま。病気と言っても、きっとお腹を壊したとか、そういうこと。表紙を開いた見返しのところには、山盛りのタルトと、それを食べるおひめさまの絵が描かれています。“木いちごのタルト”なんて、すてきな響きだなあとうっとりします。

きっと、たっぷり甘やかされて育った、おひめさま。それでも、スロボドキンさんの手にかかれば、ちょっぴりわがままな  けれど憎めない、小さなかわいい女の子として描かれています。

大人たちは、月を取ってくるのは無理だと口をそろえて言いましたが、道化師だけはちがっていました。そして、大人たちの考えよりもずっと、小さなおひめさまの方が一枚も二枚も上手だったのです。それが愉快で、おかしくて。

1944年の、コルデコット賞受賞作品。世代を超えて読み継がれているおはなしです。