しあわせなモミの木
『しあわせなモミの木』
文 シャーロット・ゾロトウ
絵 ルース・ロビンス
訳 みらいなな
出版社 童話屋
発行年月日 1991 年11月7日
※原書『THE BEAUTIFUL CHRISTMAS TREE』
価格 ¥1,200+税
ある町に、美しい通りがありました。その通りで長いこと空き家だった家に、クロケットさんというおじさんが越してきました。
けれど、いつからかお金持ちの人たちだけが住むようになったその通りで、クロケットさんは変わりものでした。あるクリスマス・イブのこと、クロケットさんは、花屋の奥に、枯れかけた小さいモミの木を見つけました。
「あれは枯れてます。売りものじゃありません。こちらになさったらいかがですか?」
そう心配する花屋さんをよそに、クロケットさんは、そのモミの木を連れて帰ることにしました
* * * * * * *
「窓ぎわにちょうどいい場所があるよ。お日様に当たって、たっぷり水をのめば、じきに元気になる。春になったら外の土におろしてあげようね」
クロケットさんは、枯れかけた小さなモミの木に、そう語りかけました。“このモミの木にかぎらず、生きているものたちは、みんなおたがいに気持ちがつたわることを、クロケットさんは知っていた”からです。
まわりになんと言われようと、自分の思うままに、自分にとって大切なことを選び取って、ていねいに向き合うクロケットさん。その姿は、日々の忙しさに追われ、わたしたちが見失いがちなことを思い出させてくれるようです。