ぬまばばさまのさけづくり

『ぬまばばさまのさけづくり』

作・絵 イブ・スパング・オルセン
訳 きむらゆりこ
出版社 福音館書店
発行年月日 1981年7月25日
※原書『Mosekonens brys』1966年発行
本体価格 ¥1,000+税


デンマークの人たちは、白いもやが地面や水面から立ち上ってくると、こう言うのだそう。
「ぬまばばさまが おさけを つくっているんだよ」って。

これは、デンマークの言い伝えをもとにした、沼に住む、ぬまばばさま一家のおはなしです。

“ぬまばばさま”は、大男の“ぬまじじさま”と、おちびでかわいい“ぬまむすめ”、それからいたずらっこの“ぬまこぞう”と暮らしています。
そんな彼らは、冬に向けて、家族総出でお酒づくりを始めます。できあがったお酒を寝かしている間、ぬまばばさま家族も長い眠りにつきました。

そして、春のはじまりの日。
目を覚まし、その特別なお酒を飲んだ彼らは、それぞれの役割を努めます。

たとえば、ぬまむすめが枯れ枝に「ふうっ!」息を吹きかけると、芽が出て、若葉が開いたり。
たとえば、ぬまこぞうが凍った水たまりを「ふうっ!」とふくと、氷が溶けて、生きものたちが動き出したり。

わたしたちが感じている春のはじまりの裏に、そんな背景があったなんて。
表紙だけ見ると、ぬまばばさまはお世辞にもかわいいとは言い難いし、決して短いおはなしでもないので、手に取られにくい絵本かもしれません。

けれど、デンマークの人たちの暮らしぶりが表れているのか、自然がとても近しく描かれていて、ユーモアもたっぷり。
それは、読めば読むほど身近なことのようにも思えてくるから不思議です。

春が来る楽しみが、またひとつ増えました。