うみべのハリー

『うみべのハリー』

文 ジーン・ジオン
 絵 マーガレット・ブロイ・グレアム
訳 わたなべしげお
出版社 福音館書店
発行年月日 1967年6月1日
※原書初版 1965年
本体価格 1,200円+税


ハリーは、黒いぶちのある白い犬。
ある日、家の人といっしょに海へやってきました。

ところが、お日さまはかんかん照り。ハリーは日かげを探します。
けれどパラソルはもう満員だし、子どもたちが作った砂のお城に入ろうとすると崩れてしまうし。日かげを探して歩き疲れたハリーは、波打ち際に座り込んでしまいます。

すると大波がハリーを襲い、気付いたときには海藻まみれ。
そんなハリーを見た人たちは、「かいぶつだ!」、「おばけだ!」と騒ぎ立てて……?

* * * * *

かわいそうな、ハリー。
日かげに入りたかっただけなのに、おばけ扱いをされ、あげく見回りのおじさんたちには、大きなくずかごで捕まえられそうになります。

たしかに海藻をかぶったハリーは、どこからどう見ても、あのかわいい犬のハリーではないのだけれど。

繰り広げられるのは、ちょっぴりハラハラするドタバタ劇。
「ハリー逃げてー!」と、思わず声をかけたくなってしまいます。

さて、ハリーは無事に家族のもとに帰れるのでしょうか。



おはなしの中で、もしかしたら引っかかる方もいるかな?というところを少しだけご説明すると、
まず、ハリーのことを “ごかいのおばけ” というのは、釣りの餌に使うあのゴカイのことで、海藻まみれのハリーが海辺の人たちにはそう見えたのでしょう。
それから、ハリーがホットドック屋さんの呼び声を、自分の名前を呼んでいると勘違いしてしまったところで、日本語訳では「いらはい!(いらっしゃい)」と言っているのを「ハリー!」と聞き間違ったことになっていますが、原書はおそらく「hurry!(急いで)」で、それを「harry!(ハリー)」と聞き間違ったということだと思います。
(原書を読んだことがないので、間違っていたらごめんなさい。)

「いらはい」を「ハリー」に聞き間違うかな?と最初は少し思ったけれど、いらはいの「はい」を「ハリー」と聞き間違うということは確かにあるかもと思いました。

と言っても小さな読者たちは、きっとおはなしの行先の方が心配で、そんなこと気にもとめないかもしれませんね。

最後の結末に、にっこり。ハリー以外の家族が、そろってみんなサングラスなのもかわいいなあと思います。夏らしい、ゆかいで元気なおはなしです。