ほしのひかったそのばんに

『ほしのひかったそのばんに』

文 わだよしおみ
絵 つかさおさむ
出版社 こぐま社
発行年月日 1966年12月1日
本体価格 1,400円+税



“おかあさんになった マリアに だかれて
あかちゃんが にっこりと わらいます
ろばも わらいます ひつじも わらいます
ことりも うたいます
みんな しあわせだからです”(本文より)


今から2000年も前のこと。
ベツレヘムの町を目指し、旅に出たヨセフとマリア。

夕日が西の空に輝き、宿屋を探していたふたりに、親切な羊飼いが町はずれの馬小屋を教えてくれました。
するとその夜、大きな星がひとつ、強く明るく光って……。

* * * * *

赤地に金色の天使が輝く表紙は、クリスマスらしい佇まい。

横長の判型も、ヨセフとマリアの長い旅の道のりをうまく表しています。
また、見開きいっぱいに天使が描かれる場面でも、この判型ゆえに天使たちは横並び。それがなんだか楽しげで、愛らしい。

本書の初版は、1966年。
50年以上も前に出版された絵本ですが、その構図やデザインは今も尚新しく、センスの光る大胆な版画には、思わずため息がこぼれるほど。
また、冒頭に引用したように物語はやさしい言葉で綴られていて、分かりやすく、耳に心地良い。

著者の和田義臣さんは1913年生まれ。佐藤英和さん・若山憲さん・森比左志さんとともに「こぐまちゃんえほん」シリーズの刊行に力を注がれました。
一方、司修さんは1953年生まれ。これまでに『まちんと』(偕成社刊)や『おとうさんだいすき』(文研出版刊)などを手掛けられ、装丁家としても有名です。

私が調べた限りでは、和田さんと司さんの共作は他に見当たらず、本書だけなのかもしれません。
絵と言葉の雰囲気がよく合っていて、すっと心に響く作品です。