ヤナギ通りのおばけやしき

『ヤナギ通りのおばけやしき』

ルイス・スロボドキン 作
小宮由 訳
出版社 瑞雲舎
発行年月日 2019年9月1日
定価 本体1,500円+税


ヤナギ通りに住む子どもたちは、毎年ハロウィンの夜になると、仮装をして家々を回り、「いたずらか、おかしか!」と叫びます。
いたずらをされたくない大人たちは、そこで、たくさんのお菓子を子どもたちにくれるのでした。

ある年のハロウィンのこと。
ヤナギ通りに住む姉弟のリリーとビリーが、「ヤナギ通りのおばけやしき」と呼ばれる、誰も住んでいないはずの家の窓に、あかりが灯っていることに気が付きました。

そこで、弟のビリーはチャイムを鳴らし、出てきたおじいさんに「いたずらか、おかしか!」と叫びました。すると、そのおじいさんは、なんと「いたずら」と答えたのです!
それも、自分たちがいたずらをするのではなく、「いたずら」をくれる、というのです。

どうしていいのやら、なんといっていいのやら、困ってしまった2人でしたが……?

* * * * *

大好きな大好きな、ルイス・スロボドキンさんの、楽しみにしていた新刊が届きました。新刊と言っても、原書初版はおそらく1959年。60年も昔に出たおはなし、ということです。

それなのに、とっても新鮮で、楽しくて。スロボドキンさんのどの作品にも共通して言えることですが、彼の作品が描いているものは、いつの時代も変わらない、普遍的なものです。例えば、何かに真っすぐ向き合うことのおもしろさだったり、家族や友人と同じ時間を共有することの楽しさだったり、大人が子どもをひとりの人として大人と平等に扱うことの大切さだったり。
そして何といっても、そこに、思わずにっこりしてしまうような、あたたかいユーモアが含まれているのが、スロボドキンさんの魅力のひとつだと思います。

本書は読みもののかたちをしていますが、ほとんどの見開きに挿絵があり、大人に読んでもらうのであれば年長さんくらいから楽しめる作品です。

真剣に「いたずら」を披露してくれるおじいさん、控えめだけれどチャーミングなおばあさん、そして、それぞれ個性的な仮装をして集まってくる子どもたち……。豊かな表情や愛らしい装いにも注目です。

巻末には、身近な素材でできる、楽しい手品が紹介されています。ぜひハロウィンパーティーでも、実践してみてくださいね。