金のおさら

『金のおさら』

バーナデット・ワッツ 作
 福本友美子 訳
出版社 BL出版
発行年月日 2015年10月15日
定価 本体1,300円+税


イザベルとエリーは、なかよしの友だち。
エリーは立派な人形の家を持っていて、2人はこの人形の家でいつも一緒に遊びました。

その人形の家の台所には、きれいな金色のお皿がかかっていました。ある日のこと、イザベルはそのお皿が羨ましくなって、自分でもよく分からないうちに、こっそりポケットに入れて持って帰ってしまいます。

けれど、お皿が気になって夜も眠れず、とうとう次の日、お母さんに本当のことを打ち明けました。

* * * * *

友だちの持っているものが、なんだかとてもよく見えて、羨ましくて。けれど、いざ自分の手元に置いてみると、その輝きはどこへやら。募るのは、ざわざわとした気持ちばかり……。

そんな子ども心が、手に取るように伝わってきます。

このイザベルのお母さんの素晴らしいところは、イザベルを1人でエリーの家へ向かわせるものの、エリーの家にちゃんと電話をかけておいてくれるところ。
1人でお皿を返しに行くのは、とても勇気がいったことでしょう。けれど、それもまた娘の成長のため。絵本ではさらっと描かれていますが、娘の気持ちを汲みつつも前に出ることはせず、陰ながら見守ってくれるお母さんの存在は、とても大きなものだと思います。



作者のバーナデット・ワッツさんは、1942年生まれ。幼いころにビアトリクス・ポターさんの影響を受け、絵本の道では、ブライアン・ワイルドスミスさんを師としました。
グリムやアンデルセンの絵本も多く手掛け、イギリスを代表する絵本作家の1人です。

そんな彼女の絵は、細い線を重ねた柔らかなタッチと幻想的な色使いが印象的。
この絵本でも、細部まで書き込まれたおもちゃたちの、その愛らしいことと言ったら!そこからまた、新しい物語がはじまりそうです。