おやすみのあお

『おやすみのあお』

著 植田真
出版社 佼成出版社
発行日 2014年6月30日
装丁 羽島一希
価格 ¥1,300+税


窓の向こうで、ささやく声が聞こえます。
ぼくは小舟を漕いで、川の流れに乗って進んでいきます。
そこに広がるのは、やわらかな青の世界。その色は、木々や草花や、動物たちを、ゆっくりと眠りへ導くように、少しずつ深みを増していきます。

おやすみの青のトンネルは、どんな明日へと続いているのかな。
これからまだまだきっとある、ぼくの知らないこと。
きょうも、あしたも、あさっても――。

* * * * * * *

私が保育士をしていたときのこと。
お昼寝の時間になると、子どもたちを眠りに誘うために、背中をトントンしたり、おでこをなでたりするのが日課でした。安心してすぐに眠ってしまう子もいれば、中には、なかなか眠りにつけない子もいました。寝つきにくい子というのはなんとなく決まっていて、その子を見ていると、眠るのが嫌なんだろうなと思うことがありました。眠るのを怖がっている、というような。
それでも、その子が眠たいのは手に取るように分かるので、「大丈夫だよ」と、安心して眠れるまでそばについていました。

でも、この絵本を読んで思ったのは、あのとき子どもが怖かったのは“眠ること”ではなくて、“眠ったあとのこと”だったのではないかと。
今隣にいるこの先生は、自分が眠ったらどこへ行くんだろう、とか。目が覚めたとき、ひとりぼっちだったらどうしよう、とか。
眠ったあとは、なにが待っているんだろう、とか。

この絵本は、とても静かな絵本です。しっとりとしていて、おだやかで、眠りの前にぴったりの絵本です。
でも、確実に、明日へと繋がっています。あたたかな光に満ちあふれた明日へ。絵本の中では、ある見開きだけ一変して明るいページが広がっています。それが、すごく良いなぁと思います。

もし、またあのときのような子どもと出会うことがあれば、眠ったあとの話をしてあげたい。
おやすみのトンネルを抜けたら、どんなことをしよう?どんなことが待っているかな、って。目が覚めたあとのことを楽しみにしながら、安心して眠られるように。