ねずみとくじら


“ ふたりは、このさき2どとあえないことを しっていました。
そしてぜったいに あいてをわすれないことも しっていました。 ”

今日ご紹介する1冊は、
体の大きさも生きる世界も違う対照的なふたりの、深い友情の物語です。



『ねずみとくじら』

作 ウィリアム・スタイグ
訳 瀬田貞二
出版社 評論社
価格 ¥1,200+税



海が大好きなねずみのエーモスは、船を作り、航海術を勉強して、とうとう船出をしました。

船旅がおもしろくて仕方がないエーモス。
なにもかも、あまりに不思議であまりに素敵で、興奮のあまり転がったはずみに、なんと海に落ちてしまったのです。
そんなエーモスを助けたのが、くじらのボーリスでした。

けれど、そんなふたりが親友になったのもつかの間、別れのときはすぐにやってきました。

そうして、長い年月が経ったある日のこと。
ボーリスは今までにない嵐にであって、浜辺に打ち上げられてしまいました。
その浜辺とは、モーリスの住む陸地だったのです  

* * * * *

エーモスとボーリスは、それぞれの異なるところを心から尊敬し、相手のことをもっと知りたいと思ったり、秘密を打ち明け合ったりします。そして、相手の役に立ちたいと思うようになります。

たとえ住むところが違っていても、もう2度と会えないと知っていても、親友であり続けることに変わりはない。
なんとも強くたくましいふたりに、じーんと胸が熱くなります。

ウィリアム・スタイグは 『ロバのシルベスターとまほうの小石』 でコールデコット賞を受賞、その他 『ピッツァぼうや』 や、映画 「シュレック」 の原作 『みにくいシュレック』 など、数々の絵本をはじめ、漫画や彫刻なども手掛けられたアメリカ出身の作家です。

本書は彼の絵本のなかでも、淡い色使いとちょっぴり哀愁ただよう雰囲気が印象的。
見返しに描かれた波も、とっても素敵です。