長ぐつをはいたねこ

『長ぐつをはいたねこ』

原作 シャルル・ペロー
文・絵 ハンス・フィッシャー
訳 矢川澄子
出版社 福音館書店
発行日 1980年5月20日
※原書『DER GESTIEFELTE KATER』1957年発行(スイス)
価格 ¥1,200+税



ある粉屋に、3人の息子がいました。粉屋の主人が死んで遺産を分けることになったとき、1番目が風車を、2番目がロバをもらったので、末っ子はネコをもらうよりほかありませんでした。
ところがそのネコ、ただのネコかと思ったら大違い!人と話ができる、とても利口なネコだったのです。
ネコは、自分の主人となった粉屋の末っ子のため(最終的には自分のためなのかもしれませんが)、長靴を履いて2本足で歩けるようになると、たくさんの知恵を絞り、努力を重ね、主人を伯爵にでっちあげました――。

* * * * * * *

本書は、シャルル・ペローが民間伝承をもとにまとめたお話を、ハンス・フィッシャーが絵物語に仕立てたものです。
ここで登場するネコの素敵なところは、ただ利口なだけでなく、とっても練習熱心なところ。長靴を履くための練習では、いろいろのポーズをとって頑張ってみるし(その成果は後に良く分かりますよ)、世にも恐ろしい顔つきの練習をするときには、鏡の前で自分とにらめっこ(もちろん本番では大成功!)。その様子はキリリとしていて勇ましく、でもなんだか愛嬌があって、このネコが見せてくれる豊かな表情に、気が付けばすっかり夢中になってしまいます。
それから、“うちあけていいますとね、”なんていう書き出しや、“~とさ。”で終わる文末。語り口調で、楽しげで、個人的にはつい口に出して読みたくなる1冊です。

※漢字表記がありますが、すべての漢字にルビがふってあります。