木かげの秘密

『木かげの秘密』

作 浅野竜
絵 杉田比呂美
出版社 学研教育出版
発行日 2013年12月21日
価格 ¥1,300+税

pieni silta

葉月が6年2組の教室に入ると、クラスで飼っている金魚が病気になっていました。リーダー格の矢島くんは、生き物係の葉月を責め立てます。するとそこへ、おなじ生き物係の中井くんがやってきました。「この金魚、どっかへすててこいよ。」そう矢島くんにどなりつけられた中井くんは、その金魚を空きかんに入れると、だまって廊下へ出ていきました。
驚いたのは、その数日後のこと。校庭のすみに立っている木の枝の別れ目に、葉月は光る何かを見つけました。夕暮れになって、その木の幹に登ってみると・・・?

* * * * * * *

主人公の葉月は幼稚園のときのある出来事をきっかけに、大勢の人の前に出るのが怖くなり、できるだけ目立たないように学校生活を送っていました。まわりに合わせるのが癖になり、みんなに笑顔を見せながら、“心の中はからっぽで、スースーと、すきま風がふいているような感じがする”と、葉月は言います。
中井くんはそんな葉月とは反対に、矢島君にいじめられても他のクラスメイトに見て見ぬふりをされても、“ひとりでいたほうがいい”と、言える男の子。
そんな2人が抱えた2人だけの秘密によって、2人の関係や、2人を取り巻くクラスの状況が、少しずつ変わっていく様子が描かれています。

お母さんやお父さん、子どもたちに関わる大人の方には、浅野竜さんのあとがきだけでもぜひ読んでいただけると嬉しいです。

※全ての漢字にはルビがふってあります。(漢数字を除く)
※第21回小川未明文学賞大賞受賞作品

小川未明文学賞
未明の理想をうけつぎ、未来に生きる子どもたちにふさわしい児童文学が生まれることをねがって、1991年に創設された賞です。(本書「刊行のことば」より)