ヒワとゾウガメ

『ヒワとゾウガメ』

作 安東みきえ
絵 ミロコマチコ
出版社 佼成出版社
発行日 2014年5月30日
価格 ¥1,300+税


ゾウガメの甲羅の上で、いつもおしゃべりをしているヒワがいました。「声」というものがないゾウガメは、おしゃべりすることはもちろん、鳴くこともできません。けれど、ヒワの声は聞こえていました。
ある日のこと、ヒワが嬉しそうに言いました。海の向こうに「ゾウ」という生きものがいるらしい、と。それはもしかしたらゾウガメの仲間かもしれないから、確かめてくる、と。

“あんたは だいじな ともだちだから”
そう言って、ヒワは旅立って行きました――。

* * * * * * *

この島に1頭しかいないゾウガメは、百年も生きられる自分の頑丈さを恨めしく思っていました。
かつて友だちだった小鳥たちは、みんないなくなってしまった。いつか自分を置いていなくなってしまうのなら、友だちになんてならない方がいい。そう思っていたのです。

けれど、ヒワはゾウガメのことを大事な友だちだと思っていました(「ヒワは」と言うと、実際のところ語弊があるかもしれませんね)。
ヒワは危険な思いをしてまでも、ゾウガメの仲間を見つけようと一生懸命でした。そんなヒワの思いに、とうとうゾウガメの心は動かされました。

“ねえ、これからも いっしょに いよう。いつか わかれが あるとしても。
きみが どんな ヒワだったか、ぼくが おぼえていてあげるから。”

ゾウガメがヒワに語りかけるこの場面が、私は大好きです。

佼成出版社さんのホームページによると、この作品は、安東みきえさんが所属している同人誌「あける」に掲載されていた短編童話を絵本にしたものだそう。

きっとこのお話を読んだ人の数だけ、それぞれに思い浮かぶ人の顔や、それぞれの感じ方があるように思います。
安東みきえさん、ミロコマチコさん、編集者さんをはじめ、このお話を絵本という形で送り出してくださった方々に、ありがとうございます!と、感謝の思いを伝えたくなるような絵本です。