きはなんにもいわないの

『きはなんにもいわないの』

著 片山健
出版社 復刊ドットコム
発行年 2014年9月21日
価格 ¥1,800+税


「ねえ おとうさん きに なって。」

すーくんがそう言って、
お父さん木になりました。

ところがすーくん、
木に登ろうとしても、なかなかうまくいきません。

お父さんは、すーくんがなにを話しかけても、
(きは なんにも いわないの。)と、
声にならない声で言うばかり。

そこですーくんは、
ひとりで登ってみることにしました。

* * * * * * *

片山健さんらしい、やわらかな心地のする水彩画が、とてもきれい。おおらかで、やさしく包まれるような感じのする絵本です。

“なつかしい”と思う人も、少なくないんじゃないかな。こんなふうに、お父さんやお母さん、先生など、周りの大人を木に見立てて、登ってみたり、力こぶにぶらさがってみたり・・・。みなさんも子どものころ、こんな経験がありませんでしたか?

子どもたちは、いつも真剣です。お父さんが木になったら、時間がかかっても、少しずつでも、自分の力で登ります。
このお父さんがすてきなのは、そんな子どもを、ただただ、見守っているところ。木になったからには、沈黙を守ります。なにがあったって慌てません。のーんびり、しています。

最後のページでも、すーくんの背中を見ながら、後ろを歩くお父さん。お父さんのあたたかさが、じんわりと伝わって、にっこりしてしまいます。

※2005年に学習研究社さんより刊行された『きはなんにもいわないの』を一部改訂し、復刊されたものです。