ロベルトのてがみ

ロベルトのてがみ』

作 マリー・ホール・エッツ
訳 こみやゆう
出版社 好学社
発行年月日 2016年1月15日
※原書『BAD BOY,GOOD BOY』
価格 ¥1,600+税


ロベルトは、5人きょうだいの真ん中です。
お父さんとお母さんは、子どもたちが生まれる前に、メキシコからアメリカへやってきました。学校へ通っている3年生のお兄ちゃんを除けば、お父さんとお母さん、そして4人のきょうだいたちは、英語が分からず、スペイン語しか話すことができませんでした。

ある日のこと、お父さんとお母さんがけんかをして、お母さんが家を出てしまいました。きょうだいのうち下の2人は、おばあちゃんの家へ預けられることになりました。
残った3人のうち、ロベルトだけが、まだ学校へ通っていませんでした。そこでロベルトは、“子どもセンター”と呼ばれる施設に通うことになりました  

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幼い子どもたちの心情が、手に取るように伝わってきます。子どもは、生きていく環境を、自分で選ぶことはできません。お父さんとお母さん、どちらも大好き。かまってもらえないと、わがままを言ったり、反対に、ぐっと我慢したり・・・。大人が思うよりもずっと繊細で、けれど同時に、たくましくもあります。このロベルトも、そうでした。“子どもセンター”という新しい環境に、さいしょは戸惑うこともありましたが、一歩一歩、ロベルトは前へと進んでいきました。

この本は、作者のエッツさんが、“セツルメント活動(貧困地区の住民の生活全般を援助する社会事業)をしていたころに出会った実在の少年をモデルにした物語”だそうです。(本書の袖より)その後、体調を崩して子どもの本作りを始められ、『ペニーさん』でデビューされました。『もりのなか』や『わたしとあそんで』などでもおなじみの作家さんです。

ちなみに、『ロベルトのてがみ』というのは、お母さんにあてた手紙のこと。最後の数ページでは、胸がジーンとして、あたたかなものが胸いっぱいに広がるような気持ちになります。

訳者の小宮由さんは、この本の原書に出会ってから、“いつか日本語にして出版したい”と思われていたそうです。この度、好学社さんから出版され、この絵本と出会えたことが、わたしもとてもうれしいです。少しでも多くの人に、手に取ってもらえますように。