あめかな!

『あめかな!』

U.G.サトー 作・絵
出版社 福音館書店
発行年月日 2009年5月30日
※月刊「こどものとも0.1.2.」2003年7月号
定価 本体800円+税


暗い空から「ぽつ」「ぽつ」と落ちてきて、「びしゃっ」「ぱしゃっ」と大きなしぶきをたてて降ってきた雨。瞬く間に、「ざあ ざあ ざあ」と激しく降りはじめました。
けれど、それはやがて穏やかになり、次第にあたたかくなって……。

雨の一連の流れを、インクの色づかいと抽象的な絵で、見事に表現しています。紙に、色とりどりのカラーインクと水を流し込む、という独特の技法で表現されているそう。

すごい絵本だなあ、と思います。とても抽象的なのに、そこに描かれていることは、確かに、雨の “はじまり” と ”おわり” です。雨の日をなんとなく過ごしていると、つい見逃してしまいがちですが、この絵本を読むと、雨のはじまりとおわりをしっかり味わってみたい、この瞬間を感じたい、と思ったりして。

文中に「ふってきたね」というセリフがあるのですが、絵本を何度か繰り返し読むうちに、子どもたちからも「ねー」と、思わず言葉が漏れることも。
顔を見合わせて、にっこり。そんな時間が大好きです。

さて、この、一見変わったお名前の著者「U.G.サトー」さん。最初にお名前だけ拝見したときは、海外の方なのか?それとも、サトー(佐藤)だし、日本人?と疑問に思いました。
のちに、東京生まれの日本人で、本名が佐藤雄治さんだと分かり、U.G、ゆーじさん!と分かりました◎

グラフィックデザイナーであり、イラストレーターであるサトーさん。絵本では、俵万智さんとの共作『富士山うたごよみ』(福音館書店刊)の他、月刊「こどものとも0.1.2.」の『すすむ』や『ぺたぺた』、月刊「こどものとも年中向き」の『あかあおふたりで』、月刊「たくさんのふしぎ」の『きみはなにどし?』なども手掛けられています。(※月刊絵本は現在すべて品切れ)
また、ヤクルトのパッケージデザインや、藤沢薬品のシンボルマークなども手掛けられているのだそう。

この、『あめかな!』も、そんな多彩なサトーさんだからこそ描けた絵本なのでしょう。斬新ですが、シンプルで、余白が多く、自由なイメージが膨らみます。