かぜフーホッホ

『かぜフーホッホ』

三宮麻由子 文
 斉藤俊行 絵
出版社 福音館書店
発行年月日 2013年9月15日
定価 本体900円+税


“フー パフッ パフパフパフパフ”

“トパ タパ テパ トパ タパ テパ”

“シャリシャリシャリシャリ”

これは、絵本に出てくる音です。
さて、それぞれ、なんの音だと思いますか?

おはなしは、女の子が、お部屋で本を読んでいるところからはじまります。
そこへ、お兄ちゃんが散歩に行こうと声を掛け、ふたりは犬を連れ、外へと出掛けます。

外は風が吹いて、落ち葉が舞っていて、行く先々で自然に触れ、いろいろな音を耳にします。

作者は、『おいしいおと』や『でんしゃはうたう』(いずれも福音館書店刊)でおなじみの、三宮麻由子さん。
幼いころに視力を失ったという三宮さんですが、三宮さんの手掛ける絵本を読むと、彼女の耳には、こんなにも豊かな音が聞こえているのかと驚かされます。

その音は、楽しくてわくわくする音だったり、ときに、すーっと心が澄んでいくような音だったり。

普段、何気なく耳にしている音。気に留めなければ、もしかすると、記憶にすら残っていない音。
そんな日常にあふれる音も、少し耳を澄ませば、さまざまな音として耳に流れ込んでくる……。三宮さんの絵本は、そんなことを気付かせてくれます。

ちなみに、絵を手掛けるのは、『クリスマスのふしぎなはこ』や『おじょらぽん』(いずれも福音館書店刊)の斉藤俊行さん。
本書でも、風や、草のにおいがページから伝わるような絵が魅力的です。個人的には、プラタナスの木が揺れている場面の、女の子が、全身で風やにおいや音を感じているところが、とても好きです。

それから、最初の場面で女の子が床に広げている絵本も、タイトルからは判別しづらいですが、知っていれば、あの本だ!この本だ!と分かり、斉藤さんの遊び心を感じます。

どうぞ、文も、絵も、じっくり味わってみてくださいね。