とらっくとらっくとらっく

『とらっくとらくとらっく(こどものとも絵本)』
作 渡辺茂男
絵 山本忠敬
出版社 福音館書店
発行日 1966年7月10日
※月刊「こどものとも」1961年7月1日発行
定価 ¥800+税
トラックは、港の倉庫から積んだ荷物を大きな町まで運びます。港のある町を抜け高速道路へ出たトラックは、ぐんぐんスピードをあげて走ります。お日さまが沈むとヘッドライトを付けて、今度は山を越えてゆきます――。

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表紙では、「TOKYO」と書かれた荷物を3人がかりで運んでいます。本文中で、行く先は“とおくの おおきな まち”としか書かれていませんが、東京行きの荷物ということかもしれません。表紙を開き、扉(タイトルページ)に描かれているトラックは、もう荷物を積み終わったよう。トラックの横手に立つ1人の男の人が「気を付けてな!」とでも言うように、片手をあげてトラックの運転手に合図をしています。表紙や扉から、もうお話は始まっているのです。
絵を手掛けるのは、1958年に『ピー、うみへいく(瀬田貞二作、福音館書店)』でデビューされたのち、『しょうぼうじどうしゃじぷた(渡辺茂男作)』や『しゅっぱつしんこう!』など数々の乗り物絵本を手掛けられた山本忠敬さん。本書は、絶妙な色使いといい陰影のつけ方といい、躍動感あふれるタッチといい、個人的には山本さんの描かれた絵の中でも特に好きな作品です。
最後の道路標識が18個ずらっと並んでいるページも、子どもたちがこの絵本に夢中になる理由のひとつ。「これは?」「これは?」と質問攻めに合うお母さんをよく目にします(笑)。トラック以外にも白バイや消防車、救急車など、たくさんの乗り物が出てくるところも、乗り物好きにはたまらない1冊です。