木いちごの王さま

『木いちごの王さま』

原作 サカリアス・トペリウス
文 岸田衿子
絵 山脇百合子
出版社 集英社
発行年月日 2011年2月9日
価格 ¥1,500+税


小さなきょうだいが山盛りの木いちごを洗っていると、木いちごに紛れて小さな虫が出てきました。ふたりの妹、テッサとアイナは、はっぱで虫をすくうと、すずめに見つからないよう藪の中に虫を逃がしてやりました。

さて、お昼になり、お姉さんとテッサとアイナ、それから弟の4人は、木いちごをみんなで全部食べてしまいました。そこで、テッサとアイナは木いちごを摘みに森へ出かけましたが、森で迷子になってしまいます。夜もふけ、泣き始めたふたりでしたが、そこで思いがけぬ不思議なことが起こって・・・。

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本書は、「フィンランドのアンデルセン」と呼ばれるトペリウスさんによるお話が、岸田衿子さんの文章と山脇百合子さんの絵によって、1冊の絵本になったもの。

テッサとアイナが森で迷ってしまう場面ではハラハラしてしまうけれど、思いがけない展開に「えっ!」と、びっくり。それまでとは反転、なんだか楽しそうなくらいです。

ストライプのワンピースに花柄のエプロンだとか、ククサ(フィンランドに伝わる木のマグカップ)だとか、木の皮のバスケットだとか、絵から伝わる北欧らしさも、すごくかわいい。
けれど、お話や絵のかわいらしさの中に、トペリウスさんが込めた大切なこと。それがなによりこちらに伝わってきます。

ちなみにこのお話、1960年代~70年代にかけて発行されていた『母と子の名作童話』シリーズ(集英社刊)の29巻に、同じくトペリウスさんの「おしのパーボ」、「そらのっぽとくもひげ」、「なみのあしあと」の3編とともに収録されていたようです。残念ながら現在は品切れですが、いつか手に取る機会があれば、ゆっくり読んでみたいなと思います。