パセリともみの木

『パセリともみの木』

作 ルドウィッヒ・ベーメルマンス
訳 ふしみみさを
出版社 あすなろ書房
発行年月 2007年4月10日
価格 ¥1,600+税


これは、深い深い森のはずれのおはなし。

切り立った崖のふちで、1本のもみの木が生れました。
まっすぐ空へ向かって伸びる森の木々と違い、崖のふちで、厳しい自然に耐えながら大きくなったもみの木。いつしかその体は、すっかりねじまがっていました。

そんなもみの木でしたから、他の木々が人間に切り倒されても、崖に立つもみの木だけは、ずっとそこで大きく育ち、茂る枝はテントのようになりました。

やがてそこに、シカが住みつきました。互いに助け合い、仲良く歳をとっていった、シカともみの木。パセリが大好きなそのシカは、いつしかパセリと呼ばれるようになりました。

ところがある日のこと、双眼鏡でパセリを見付けた猟師が、音を立てず崖の上にやってきて・・・。

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マドレーヌシリーズの作者、ベーメルマンスさんの絵本です。
森の木を切ること、狩猟のこと、自然と生きるということ・・・。考えさせられることの多いおはなしです。

各見開きは、右が絵、左が文章となっていて、文章のページは、うすく黄みがかったページに、それぞれ野の花の絵が添えられています。
巻末には、その花のリスト(英語の名前と、日本語の名前)が付いていて、花の名前を確認できるのもうれしい。

ベーメルマンスさんの絵本の中では、すこし静かな、しっとりとしたおはなしですが、例えば木こりが木を切るシーンに、かわいらしい女の子がふたり(双子かな?)座っていたり、望遠鏡をのぞくパセリの姿がなんだかおかしかったりと、ベーメルマンスさんらしいユーモアを感じます。

クリスマスのおはなし、という訳ではありませんが、表紙のモミの木がまるでクリスマスツリーみたいにきれいなので、この時期にご紹介してみました。