こりのぼりくんのさんぽ

『こいのぼりくんのさんぽ』

文 すとうあさえ
絵 たかおゆうこ
出版社 ほるぷ出版
発行年月日 2018年3月1日
定価 本体950円+税


こいのぼりくんが空を散歩していると、
屋根の上のねこちゃんが、さるくんの家まで乗せてほしいと頼みました。

ねこちゃんは、こいのぼりくんの背中に乗せてもらって大喜び。
ところが、さるくんを見つけて、思わず立ち上がってしまったねこちゃん。
こいのぼりくんはぐらぐら揺れて……!?

* * * * *

ほるぷ出版さんから発行されている、「はじめての行事えほん」というシリーズの1冊です。

現在、シリーズには、『あけましてのごあいさつ』、『まめまきできるかな』、『おいしいおひなさま』、『だんごたべたいおつきさま』、『おおきくなったの』(七五三)があります。
どれも、文章はすとうあさえさんが書かれていますが、絵はそれぞれ別の方が描かれています。それぞれ異なる作風の画家さんが並びますが、絵本の絵でなにより大切なことは、おはなしに合った絵かどうかということ。絵がおはなしを補えているか、絵がおはなしを語っているか。そういう絵かどうかということは、絵本を選ぶうえでも、ひとつの基準になると思います。

このシリーズは、“はじめての”行事えほんというだけあって、文章はとても短いけれど、その分絵がよく語っています。

例えば、この『こいのぼりくんのさんぽ』だと、文章には書かれていませんが、さるくんたちが折り紙の「かぶと」を被っていたり、ねこちゃんが背負っていた風呂敷の中身が「かしわもち」だったり。
それから、奥付に添えられた絵や、本のそでの部分、見返しの絵などにも、端午の節句にちなんだものを見つけることができます。

何度も読むうちに、子どもが自分で気が付いたり、どうして?これなあに?と、疑問を持つ日が来るかもしれません。その時が来れば、どうぞいっしょに、喜んだり考えたりして楽しんでください。

巻末には行事のミニ解説が付いていて、もともと端午の節句は菖蒲の節句(厄払いの行事)だったこと、それがどうして端午の節句になったか、どうしてこいのぼりを飾るようになったのか、はたまたなぜかしわもちを食べるのか、など、行事の解説が収録されています。
ミニ解説と言っても、きちんと要点を抑えてあって、子どもの疑問に答える手助けとなってくれそうです。

作者のすとうあさえさんは、『子どもと楽しむ行事とあそびのえほん』(さいとうしのぶ絵、のら書店刊)の著者でもあります。
行事の絵本だけでなく、その由来や楽しみ方をもっと知りたいなと思ったら、合わせておすすめしたい1冊です。