くんちゃんのもりのキャンプ

 『くんちゃんのもりのキャンプ』

ドロシー・マリノ 作
間崎ルリ子 訳
出版社 ペンギン社
発行月 1983年1月
定価 本体950円+税


いとこのアレックが誘いにきて、
2人でキャンプに行くことになった、こぐまのくんちゃん。

くんちゃんは道すがら、
こまどりに巣の作り方を聞いたり、あひるに湖での浮き方を聞いたり、
行く先々で生きものたちと交流します。

ところが、いざ自分の寝床を作ろうとすると、
こまどりに教えてもらったようにして木から落っこちてしまったり、
湖で、あひるに教えてもらったように浮かぼうとして沈んでしまったり……と、
くんちゃんは失敗ばかり。

その度にアレックは、くまならではのやり方をくんちゃんに教えてくれます。
そして、くんちゃんは色々なことを学んでいきます。

ところが、このおはなしのおもしろいところは、
帰り道を覚えていたのはくんちゃんだった、ということ。

そのことについて、訳者の間崎ルリ子さんが本書のあとがきで、
“人との出会いがあり、心が通いあってはじめて、世界を知り、自分を知り、その経験が心の中で実を結ぶようになる”
また、”こまどりやあひるやかわせみに会い、心をかよわせたからこそ、くんちゃんは、自分の通ってきた道をしっかり心に刻むことができたのでしょう”
と、書かれています。

くんちゃんが森の生きものたちから学んだこと、
それは確かにくんちゃんに合った方法では無かったかもしれません。
人によっては、そんなこと聞かなければ失敗もしなかったのに、と思うかも。

けれど、そのことによって、自分と他者との違いを知り、
そこからくんちゃんは、本当の “自分” を知ったのだと思います。

だとすれば、くんちゃんが学んだことはとても大切なこと。
その経験を糧に、これからも、もっともっと成長していくのでしょうね。


それからわたしは、この、いとこのアレックのことも大好きです。

くんちゃんが木の上に寝床を作ったときも、
否定する訳でもなく、自分は岩の出っ張りの下に寝床を作り、
「きがかわったら ここにきて いっしょに ねていいよ。」
なんて言ってくれるし、
湖で、くんちゃんがあひるの真似をして失敗したときも、
「くまは こうやって およぐんだよ。」
と言って、泳ぎ方を教えてくれたりして。

くんちゃんのそばにいる人たちは、大人も含め、とてもすてき。
そして、ちょっとおばかさんだけれど、
子どもらしくて、素直で愛らしい、くんちゃんも。

シリーズは、全7作。
色は違えど、すべて2色刷りで、素朴で味わい深いシリーズです。
※()内は原書初版

『くんちゃんのだいりょこう』(1961年)
★『くんちゃんとにじ』(1962年)
『くんちゃんのもりのキャンプ』(1964年)
『くんちゃんのはたけしごと』(1967年)
★『くんちゃんはおおいそがし』(1967年)
★『くんちゃんとふゆのパーティー』(1967年)
『くんちゃんのはじめてのがっこう』(1970年)
★は、詳細ページに飛びます。