ともだちは海のにおい

『ともだちは海のにおい』

作 工藤直子
絵 長新太
出版社 理論社
税込価格 ¥1,260



それは、くらい夜の、なにもない海。お茶がすきないるかと、ビールがすきなくじらが出会いました。コドクが好きなふたり。けれど、さびしいくらいしずかな夜は、だれかとお茶が飲みたくなったり、だれかとビールが飲みたくなったりします。ふたりが出会ってからというもの、すきなものについて語り合ったり、いっしょに人魚を探しに行ったり、いつでも思いついたときに誕生祝いをしてみたり。
ふたりのやりとりはなんともおだやかで、心にあたたかいものがじんわりと染みわたるようです。

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詩あるいはメモのようなものと、短い物語が、交互に繰り返されるかたちで構成されています。小学校に入る前、あるいは低学年くらいの子どもたちには、それを対にして1章ずつお話ししてあげてもいいですね。個人的な意見ですが、高学年ぐらいからの子どもたちには、ぜひ自分で手に取りじっくりと味わってほしい作品です。そして、大人にも・・・できれば大人の中でも、しずかな夜にだれかとビールを飲みたくなる気持ちが分かるような(そしてそのおいしさもよーく分かっているような)大人にこそ、おすすめしたい作品です。こんな友だちがいるふたりのことを、ちょっぴり羨ましくも思ってしまうかも。

ちなみに、おなじく理論社さんから新装版が出ているのですが、個人的には昔の装丁のものが好きなので、そちらをご紹介しました。(昔のものも、まだそのまま販売されています。)

とにかく、子どもから大人にまでおすすめしたい作品です。枕元にそっと置いておいて、ふと読み返す――そんな、シチュエーションがぴったりな1冊です。